Vol.30 友達に貸したお金が戻ってこない
Q.親しい友達が「ボーナスで必ず返すから」というので、10万円ほど貸しました。でもボーナス時期はとっくに過ぎたのにまだ返してもらえません。お互い気まずくなりそうで、催促もできずに困っています。どうしたらいいでしょう。(Kさん、26歳、会社員)
『金を貸せば、友と金とを失う』というのはシェイクスピアのハムレットの中のせりふですが、そういうことって、今も昔も変わらないようですね。
このKさんも、まったくの善意から、借用証を取り交わすこともなく、もちろん無利子で用立ててあげたようです。その上、性格も優しすぎるのか、相手に気を使ってなんとなく顔を合わせるのも遠慮しているとのこと。それではお金が戻ってくるはずはありませんね。
その友人に直接催促する勇気が出ないようなら、それとなくメールで催促してみてはいかがでしょうか。単に忘れていただけかもしれませんし、そうでなければ反応を見て、次の手を考えましょう。もっとも最悪の場合は「お金」と「友情」のどちらか、あるいはシェイクスピアの言うように両方をあきらめなければならないかもしれませんが…。
モノの貸し借りならそれほどでもないのですが、こと「お金」の貸し借りとなると人間関係はギクシャクしがちになります。それは「お金」が非常に感情にからまりやすいという性質を持っているからです。
お金を貸し借りすると、それまで対等だったはずの人間関係に心理的な上下関係が生まれます。通常の場合、友達からお金を借りるということは、本人が意識していてもいなくてもプライドが傷つく行為なのです。ですからお金を借りることで、心理的に下位に立たされた方は、貸してくれた人のほんの少しの言動にも敏感になり、ちょっとしたことを気にしたり、反発したりするようになることも多いのです。
また、貸した方もそんな友人の気持ちを感じるのでしょう、今までは好きなように語り合えていたのに、なんとなく遠慮がちになってしまい、親しければ親しいほど、逆に気をつかうようになってしまいます。
単なるお金の貸し借りで大切な友情にひびをいれないためにはどうしたらいいのでしょう。
それには、感情に絡まりやすいというお金の性質を考えて、徹底的に「感情」を切り離すことです。つまりあくまでもビジネスライクに徹すること。返済時期や利子などをはっきりさせ、きちんと借用証を作成し、友情とは別の次元で話を進めれば、借り手がプライドを傷つけられる事もないし、貸す方も変に気を使わずにすむでしょう。実際、友達同士がお金の貸し借りでもめる場合は、無利子・無担保といったように、まったくの好意(ある意味友情を担保として)で貸す場合が多いといわれています。
せっかく培ってきた友情を、いくばくかのお金のために失うのは本当に残念なことですね。お金ならいつかは取り戻せても、大切な友人を取り戻すのは容易なことではありません。場合によっては『断るのも友情のうち』ですよ。
・お金の貸し借りによって心理的な上下関係が生まれ、
それによって大切な友人関係もギクシャクしやすくなる
・お金の貸し借りはビジネスライクに徹して
・場合によっては断るのも友情の証
作者: 武者小路 実篤
出版社/メーカー:岩波書店
価格: ¥ 399 (税込)
武者小路実篤といえば「仲良きことは美しき哉」という野菜の描かれた色紙を思い出しますが、最近は見かけなくなりましたね(もう知らない人が多いかも)。中学生の時に読んだこの名作、また手にとってみたくなりました。
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